「片足立ち」を20秒以上できない高齢者は脳血管疾患に注意

2014年12月25日
 片足立ちで20秒以上バランスをとるのが難しい高齢者では、臨床的症状がなく健康な人でも、脳内の小血管の損傷や認知機能の低下が起きているおそれがあることが、京都大学付属ゲノム医学センターの田原康玄氏らによる研究で明らかになった。

 「片足でバランスをとる能力は、脳の健康の重要なテストとなることを発見できた。片足バランスのとりにくい人は、脳疾患や認知機能低下のリスクが高いので、注意した方が良い」と田原氏は述べている。
20秒以上の片足バランスをとれない人はリスクが高い
 今回の調査は、愛媛大学病院抗加齢センターで実施している「抗加齢ドック」に参加した平均年齢は67歳の健康な中高年者1,387人を対象に行われた。

 参加者に目を開いたまま片足を上げてもらい、片足で立つことのできる時間を測定した。測定では左右いずれかで行い、最長時間は60秒で、1人2回行い、良い方の結果を分析に使用した。

 また、参加者の脳の小血管の状態を脳磁気共鳴画像を用いて検査した。ラクナ梗塞と微小出血などの、症状の出ない小梗塞である脳小血管疾患について調べた。

 その結果、20秒以上の片足バランスをとることができない人では、脳小血管疾患や認知機能低下のリスクが高まることが明らかとなった。

 片足立ちのバランスをとりにくいのは、以下のような人だった。
・2つ以上のラクナ梗塞病変があった人の34.5%。
・ラクナ梗塞病変が1つあった人の16%。
・2つ以上の微小出血があった人の30%。
・微小出血が1つあった人の15.3%。

 脳小血管疾患のあった人は全体として高齢で、高血圧があり、頚動脈が厚く動脈硬化が進行していた。これらの変量を調整した後でも、脳小血管疾患があった人は、片足立ちの時間が短かった。片足立ちの時間の短さは、認知スコアの低さとも関連していた。

 片足で立つことの難しさと加齢に強い関連があることも判明。年齢が60歳以上になると、片足立ちの時間が明らかに短くなった。

高齢者の「フレイル」(虚弱、衰弱)とも関連
 研究チームは、片足出しテストは、一見健康そうな人であっても早期の脳梗塞などの病理学的変化と認知機能の低下を予測する簡単な方法であるとしている。姿勢の不安定性がみられる高齢者には、よりいっそうの注意を払うべきだとの見解を示している。

 高齢者が機能障害や要介護に至るのを予防するために、生活機能障害をまねく「フレイル」(虚弱、衰弱)という言葉が近年注目されている。

 多くの高齢者はフレイルな状態を経て寝たきりや要介護に移行するが、フレイルとは不可逆的な虚弱・老衰状態を指すのではなく、適切な介入によって回復し得る状態をいう。

 片足出しテストはバランス能力の衰えをみるのではなく、潜在的な脳小血管疾患を調べるためのものだが、サルコペニア、立位動揺性、動脈硬化性疾患といった高齢者に多いフレイルティとも関連しているとしている。

 研究は米国心臓学会が発行する医学誌「Stroke」に発表された。

Ability to balance on one leg may reflect brain health and stroke risk(米国心臓学会 2014年12月18日)

(TERA)