サッカーが運動療法に 週2回のサッカーが血糖コントロールを改善

2014年06月30日
 サッカーは若者向けのスポーツという印象が強いが、運動強度を適度にコントロールすれば、2型糖尿病患者や高齢者にとっても効果的な運動療法になることが明らかになった。
サッカーを続けると血糖コントロールが20%改善
 2型糖尿病患者が、サッカーを取り入れたトレーニングを週に2回、24週間にわたり続けることで、血糖コントロールが改善し、腹部脂肪も低下し、身体パフォーマンスも向上したことが確かめられた。

 サッカーは欧州を中心に人気のあるスポーツで、ルールが単純なので参加しやすく、社会的な相互交流の要素も含んでいる。プロスポーツとしてのサッカーは常に走り続ける激しいスポーツという印象があるが、アマチュア選手のサッカーでは通常の歩行をする時間も多く、適度なインターバル運動になるという。

 研究は、デンマークのコペンハーゲン大学スポーツ健康研究所のジェンズ バングスボ教授らによるもので、ふだん運動をしていない30?60歳の、2型糖尿病の男性21人と、高血圧の男性32人を対象を対象に行われた。

 参加者を、▽週に2回1時間のサッカーを楽しむグループ、▽何も運動をしないグループに分けた。

 研究開始から24週間後の時点で、サッカーを行ったグループでは、身体パフォーマンスは50%向上し、血糖値が20%、腹部脂肪が12%、改善したことが分かった。大腿骨の骨密度も改善していた。

 さらに、糖尿病患者では12%、高血圧症患者では10%、の最大酸素摂取量の増加がみられた。糖尿病患者は平均で2kg体脂肪が減少していた。身体機能がより良くなることと体脂肪率が低下することによって、より日常生活で動きやすい体となったという。

運動習慣のない人でもサッカーなら長続きする
 63?75歳の高齢者を対象とした別の試験でも、サッカーが最大酸素摂取量、筋機能、骨密度など、健康的な生活をおくるうえで重要となる指標を改善することが明らかになった。

 「高齢者は特に骨密度が低下しやすく、運動によって改善することができますが、骨折リスクを低下させるのは容易ではありません。サッカーであれば、運動や心臓の能力を向上させる効果や、転倒や骨折のリスクを最小限に抑える効果を期待できます」と、コペンハーゲン大学のピーター クルストラップ氏は説明する。

 また、運動を続ける上で障害になるのは、運動を安全に行うことに加えて、運動を続けられるよう動機付けを与えることだという。今回の研究では、運動経験のない患者に限定したため、体力差が大きくなく、参加者は均等にスポーツに参加することができた。

 研究終了後も、参加者の多くはサッカーのトレーニングを続けているという。その理由は明快で、「サッカーを通じて生活の質が向上している」と感じている人が多いためだという。参加者は今後は海外での合宿も計画している。

 「サッカーは人気があり、集団で行うスポーツなので、参加者に楽しみを与えることができます。研究の参加者の多くは、サッカーを続けることで満足度が高まることが示されました。運動をすること自体が動機になるのは強みです。楽しく運動をできる環境であれば、運動は長続きします」と、クルストラップ氏は述べている。

 GPS測定やビデオを用いた分析により、サッカーにはダッシュや急停止、ターン、ドリブル、パス、シュートなど多様な運動の要素が含まれることが明らかになった。

 サッカーにより心肺機能と筋力が向上すると、階段を登る、買い物をする、自転車に乗る、ガーデニングなどの日常的な身体活動も容易にできるようになる。こうした身体能力の向上が生活の質を改善していくという。生活の質を改善することで、要介護のリスクが低下し、家族の健康リスクを低下させることも可能になる。

 「過度の運動はかえって身体的な障害を高めるおそれがあるので、無理をしないことが大切です。会話ができるくらいのペースで、社会的な交流を高めながらサッカーを行うと効果的です」とアドバイスしている。

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