ハイヒールが女性の健康に与える影響 自分の足を知ることが大切

2014年03月07日
 ハイヒールには「足が美しく見える」、「背が高く見える」といった利点がある。しかし、米国整形外科学会は「ハイヒールを長期間履いていると、むしろ健康被害があらわれる」とアドバイスしている。
ハイヒールは足への負担が大きい
 仕事の都合でヒールの高い靴を履かなければならない人も多い。そうした人を悩ませるのが腰痛だ。ハイヒールを履くと、バランスをとるために腰の骨が前方に反った状態になる。そうなると、腰の骨の間にある椎間板という軟骨への負担が増し、腰痛が引き起こされる。

 医学雑誌「ランセット」にも、踵の幅が広い人にとって、ヒールの先が細ければ細いほど、膝の変形性関節症のリスクを増加するという調査結果が発表された。

 ハイヒールを履くことで引き起こされるリスクは以下の通り――

ハイヒールが女性の健康に与える悪影響

・ ハイヒールを履くことで、体重を足先で支えるようになり摩擦が起こりやすくなり、靴擦れやウオノメ、角質ができる。

・ 日頃からハイヒールを履いていると、ふくらはぎの筋肉がはり、踵のうしろのアキレス腱に炎症が起こりやすくなる。

・ ハイヒールを履くことで足首が不安定になるので、ちょっとした段差や不意な動きで足を捻挫しやすい。

外反母趾や中足骨痛症に注意
 痛みを我慢してハイヒールを履き続けると、親指が小指の方に曲がっていく「外反母趾」が起こりやすい。特に、足が滑ってつま先や親ゆびの内側が靴に圧迫されるのが良くない。

 母趾の付け根の関節の裏側が痛むのなら、靴底が硬すぎたり薄すぎるために起こる「種子骨障害」のおそれがある。痛むのが内側面であれば、靴の横幅がきつすぎるために起こる「滑液包炎」が疑われる。いずれにしても、この状況を続けていると母趾が曲がって外反母趾になる可能性が高い。

 外反母趾は、初期の段階では、足の変形が少なく、親指の付け根が赤くなる、痛むといった程度で済む。この段階では、ストレッチや靴を変えることで症状は治るが、これが進むと元には戻らなくなる。親指の付け根が突出してくるなど骨が変形し、靭帯も縮んでしまう。さらに進行期に入ってしまうと、靴を履かなくても指が曲がっていき、痛むようになる。

 さらには、ハイヒールを履くことで、「中足骨痛症」とよばれる足先の痛みが起こりやすくなる。足の甲を手で触ると、それぞれ足の節骨(指の骨)へとつながる5本の骨があるのが分かる。これが「中足骨」と呼ばれる骨で、その骨の頭、指の付け根の大きな関節が「中足骨骨頭」にあたる。

 ヒトが立っているとき、踵、足の親指のつけ根の骨頭、小指の付け根の骨頭の3点と、その間の弓なりになったアーチと呼ばれる構造が、足を支えている。ハイヒールなどの前足部、足の爪先へと体重がかかりやすく、姿勢の変化による前足部への体重の集中などで開張足が起こり、足の横のアーチが無効になる。

 こうなると、荷重がかからなかった足の部分にまで体重がかかるようになり、足の変形が起こる。変形がひどくなり、痛みを伴うようになるのが、中足骨痛症だ。

ハイヒールを履くときのアドバイス
 ずっとハイヒールを履くと踵の位置が慣れてしまい、フラットな靴を履くことが難しい人もいるかもしれない。"どうしてもハイヒールを履きたい"という人へのアドバイスは以下の通り――

ハイヒールを履きたいときのアドバイス

・ ハイヒールを、長時間履き続けないようにする。例えば、通勤にはヒールのないフラットな靴を、会社では踵が開いているパンプスを、アフターファイブはハイヒールを、といったように場所や目的に応じて使い分ける。

・ハイヒールを履くときは、踵の部分が水平で、ヒールが低くて太く、十分な幅のある靴を選ぶ。低いヒールは安定性があり衝撃を吸収しやすい。

・ハイヒールは歩くための実用的な靴ではないので、移動もなるべく車や電車で行う。足に負荷が余分にかかるので、なるべく走らないようにする。

・ハイヒールを履いているときは、はじめに踵が地面につくようにして歩く。小股で歩いて、足に負担をかけないようにする。

・先細のハイヒールを履いていると、つま先の血行が悪くなり、筋肉や腱も縮こまる。1日の終わりにマッサージをすると効果的だ。靴を脱いだらすぐ足指の間を広げ、ふくらはぎ、踵、脚の筋肉のストレッチを行う。

足に合った靴を選ぶことが大切
 どの足の変形、そして症状にも言えることだが、「足に合った靴を履くのが第一」だ。ヒールのある靴は、ぴたりと合う1足を選ぶためには足裏の長さだけでなく、幅、甲の厚み、アーチ、左右差などを知ることが大切だ。

 靴選びのポイントは4つある。(1)つま先に圧迫感がない、(2)甲が靴に食い込んだり、浮いたりしない、(3)踵が余っていない、(4)足を入れる履き口が足の形に沿っている、などをチェックする必要がある。ヒールの高さは、3cm以下が望ましい。

 靴を選ぶときは、シューフィッターのいる店で自分に合った靴を選ぶと安心だ。試着するときには、遠慮せずに「店内を歩きまわる」ことを心掛けたい。

Suffering for Fashion: Rethink Shoe and Bag Choices(米国整形外科学会 2013年10月3日)
The Real Harm in High Heels(米国オステオパシー協会 2014年2月10日)