テレビと自動車、パソコンをもっていると糖尿病と肥満が増える
2014年02月21日
「テレビ」、「自動車」、「コンピュータ」は現代の三種の神器といえる。この3つを所有する人は、肥満や2型糖尿病の発症率が高く、その影響は先進国のみならず途上国に及んでいるという調査結果が発表された。
先進国ではテレビ、自動車、コンピュータの3つを所有している人が大部分だが、取得の少ない途上国ではまだ普及していない地域が多い。しかし、その途上国でも、この3種類を所有している人では、2型糖尿病は2.5倍に、肥満は3倍に、それぞれ発症率が上昇することが判明した。 この研究は、世界各国の肥満や糖尿病の発症率の偏差を調査したもので、カナダ医学会の学会誌に発表された。
生活が豊かになり運動不足が増加
肥満や2型糖尿病は、米国や日本などの先進国だけでなく、低・中間所得の国でも急速に増加している。特に工業化が著しく所得が増えている地域で爆発的に増えている。
テレビや自動車などは、中国やインドなど途上国でも急速に普及している。これらは世界でももっとも糖尿病が急速に増加している国だ。
国際的な研究チームが、世界の17ヵ国の合計10万7,599件の家庭、15万3,996人の成人を対象に調査した。
その結果、途上国では、テレビ、自動車、コンピュータの3つを所有している人の2型糖尿病の発症率は11.7%だったのに対し、所有していない人では4.7%となり、これらをもっている人では有病率が2.5倍に上昇することが分かった。
肥満については、3つを所有している人の14.5%が該当し、所有していない人では4.7%であり、3つを所有することで3倍に上昇していた。
「テレビ、自動車など便利な道具を使えるということは、生活が豊かになっていることを示しています。そうした国では、家事は自動化され、通勤は車で済ませ、仕事中は座ったままの生活が定着しています。人々の身体活動の量は低下し、運動不足に陥っています」と、カナダのサイモンフレイザー大学保健医療学部のスコット リア教授は話す。
「生活が便利になることと、体を動かす機会が減り運動不足におちいることとは、トレードオフの関係にあります。意識して運動する機会を作らなければ、健康上の深刻な問題を抱えることになります」と、指摘している。
テレビの前で寝転がってスポーツを観戦するよりも、立ち上がって自分で運動やスポーツをすることが健康のためには勧められる。栄養摂取においても、生活が豊かになると、むしろ高カロリー・高脂肪の食事に偏りがちになる傾向があるという。
「あなたは家から外へ出かけるときに、車に乗りますか? それとも歩きますか? より賢明な選択は自分の足で歩くことです」(リア教授)。
低収入の国では、3種類を全て所有している人では、所有していない人に比べ、身体活動は平均で31%低下し、座ったままの時間は21%増加していた。腹囲周囲径は、3種類を所有していない人の方が9cm少なかった。
研究チームが調査したのは、以下の17ヵ国――・ 高収入の国(スウェーデン、アラブ首長国連邦)
・ 高~中収入の国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、トルコ)
・ 中~低収入の国(中国、コロンビア、イラン)
・ 低収入の国(バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ) The association between ownership of common household devices and obesity and diabetes in high, middle and low income countries(カナダ医師会 2014年2月10日)