乳がん予防に効果的な運動 乳がんリスクを下げる方法
2013年10月11日
乳がんは、日本では女性の16人に1人が、米国では8人に1人が発症するという深刻な病気だ。しかし、ほとんどの女性にとって、生活スタイルをアクティブに変えることが、乳がんの予防につながる。
「乳がんの4分の1は、運動を習慣として行い、適正な体重を維持することで、予防が可能です。すべての年齢の女性にとって、運動や体重コントロールがもたらす恩恵は大きいのです」と、米ワシントン大学フレッド ハッチンソンがん研究センターのアン マクティアナン教授は言う。
乳がんの90?95%に生活スタイルが関与
がんの中には、遺伝子の変異が発症に関与しているものがある。乳がんでは全発症例の5?10%がこれに該当し、「遺伝性乳がん」と呼ばれる。
がんの発生を抑える働きをもつタンパク質を作りだすがん抑制遺伝子として、もっとも知られているのは"BRCA1"と"BRCA2"だ。これらの遺伝子に変異がある女性は、乳がんの発症リスクが高いと考えられいる。
実際に、乳がんの患者さんがBRCA1、BRCA2の遺伝子検査を受けて、遺伝子変異がみつかった場合、その患者さんの治療や検診はそうした遺伝的な体質を前提として行われる。
女優のアンジェリナ ジョリーさんは、BRCA1という遺伝子に変異がみつかり乳がんの生涯発症リスクが高いと判定され、予防のために乳房切除に踏み切った。
「乳がんの遺伝的な要因は変更できません。だからといって、悲観的になる必要はありません。遺伝子変異がみつかった人でも、必ずしも全員ががんを発症するわけではなく、実際にその人が乳がんを発症するかどうかは、遺伝子検査だけでは分かりません」と、マクティアナン教授は説明する。
「90?95%の女性では、遺伝以外の環境因子が主に関与しています。つまり、乳がんの発症しやすさに影響する生活スタイルを改善していくことで、乳がんの発症リスクを下げることができるのです」(マクティアナン教授)。
エストロゲンとインスリンが影響
乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンの影響を受けて増殖する。出産経験がなかったり、出産回数が少ない女性や、初潮が早かったり、閉経が遅い女性は、エストロゲンにさらされる期間が長くなるので、乳がんの発症リスクは高くなる。
閉経後は、卵巣からのエストロゲンの分泌は少なくなるが、副腎で分泌されるアンドロゲンというホルモンが、脂肪細胞でエストロゲンに変換される。そのため、脂肪細胞の多い肥満の女性の体内では、やせた女性よりも多くエストロゲンが作られる。
「過体重や肥満の女性では、エストロゲンが多くなっている可能性が高く、乳がんを発症する危険性が上昇しています。一方で、肥満細胞が少ない女性では、エストロゲンも少なく保たれます。特に閉経後の女性では、過体重や肥満を解消し、体重をコントロールすることが重要です」と、マクティアナン教授は強調する。
「体重コントロールといっても、過体重の人がほっそりとしたモデル体型に変わらなければならないという意味ではありません。過体重や肥満の人は、体重の5?10%を減らすぐらいで良いのです。例えば体重が80kgの人は8kgを減らしただけでも、がんになる危険性の多くを取り除くことができます」。
乳がんの発症に大きく影響するもうひとつのホルモンがインスリンだ。インスリンは、血糖値を下げる働きをするほぼ唯一のホルモン。血糖が全身の臓器にとどくと、インスリンの働きによって臓器は血糖をとり込んでエネルギーとして利用したり蓄えたり、さらにタンパク質の合成や細胞の増殖を促したりする。
インスリンが血中に分泌されているにもかかわらず、臓器のインスリンに対する感受性が低下し、その作用が鈍くなっている状態を「インスリン抵抗性」という。インスリン抵抗性に大きく関わっているのは肥満、中でも脂肪脂肪の蓄積だ。血糖をとり込むのを妨げるさまざまな生理活性物質が、脂肪脂肪から分泌される。
「肥満があり、インスリン抵抗性が起きている人の体では、インスリンが十分に活用されないので、さらに多くのインスリンが分泌されます。高インスリンの状態になると、がん細胞の増殖が促されることが、さまざまな研究で確かめられています」と、マクティアナン教授は指摘する。
運動や身体活動を増やす工夫 がん予防に効果的