糖尿病の人は身体能力が衰えやすい 40歳を過ぎたらロコトレで対策
2013年07月26日
糖尿病の人は高齢になると、そうでない人に比べ、身体能力が低下する危険性が50%以上高いという研究が発表された。運動を習慣として行わないでいると、体の運動器の障害が起こりやすくなり、ウォーキングなどの基本的な動作が低下するという。
血糖コントロールで身体能力の低下を防ぐ
オーストラリアのベイカーIDI心臓・糖尿病研究所の研究チームは、糖尿病患者の日常生活動作(ADL)を調査した26件の研究を解析した。対象となったのは1型糖尿病と2型糖尿病の患者3,224人で、年齢は65歳以上だった。
骨や筋肉の量は、20?30歳代でピークを迎え、40?50歳代を過ぎると、歳をとるに伴い減少していく。骨や筋肉が弱ったまま60歳代を過ぎると、思うように動けない体になってしまうおそれがある。調査では、糖尿病患者では特にこの傾向が強いという結果になった。
「歩く、電話をかける、買い物をする、入浴する、服を着る、食事をするといった日常的な身体活動の障害について調べたところ、糖尿病の人ではそうでない人にくらべ、身体能力が低下する危険性が50?80%高いことが分かりました」と、オーストラリアのモナシュ大学のアンナ・ペーテルス氏(予防医学)は話す。
糖尿病の人はそうでない人に比べ、ウォーキングなどの移動能力では71%、電話をかける、買い物をする、物を運ぶといった身体活動では65%、食事をする、服を着る、入浴するといった日常の基本的な活動では82%、それぞれ身体能力が低下しやすいことが示された。
なぜ糖尿病患者で身体能力が低下するのか、はっきりとした原因は不明だが、「血糖値が高い状態が続くと筋肉の慢性的な炎症が引き起こされたり、筋肉が衰弱しやすくなり、障害の原因となっている可能性があります」と、ペーテルス氏は指摘している。
身体能力の低下を防ぐカギは、良好な血糖コントロールであることも示唆された。「良好な血糖コントロールによって、さまざまな糖尿病合併症を予防できます。血糖コントロールを改善することで、将来に身体能力が低下するのも抑えられる可能性があります」と、ペーテルス氏は言う。
この30年間に世界の糖尿病有病数は2倍以上に増え、2008年の糖尿病人口は3億4,700万人に拡大した。「心臓病、脳卒中、網膜症、腎臓病、全身の血管性疾患などの糖尿病合併症を予防することが、世界的に大きな課題となっていますが、今後は糖尿病患者の体力低下を防ぐ対策も必要となります」と述べている。
体幹と下半身の筋力強化に効果的な運動
「ロコモティブシンドローム」とは、主に加齢による骨・関節・筋肉といった運動器の機能が衰えることにより、日常生活での自立度が低下した状態のことをいいう。例えば、足腰が弱くなり、立ったり歩いたりする移動が大変になってきた状態もロコモだ。
- 片脚立ちで靴下がはけない
- 家のなかでつまずいたり滑ったりする
- 階段を上るのに手すりが必要
- 15分くらい続けて歩けない
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
- 2kg程度(500mlのペットボトル4本分)の荷物を持ち帰るのが困難
- 家のやや重い物を持つ仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難
- 足を肩幅より少し広く開いて立つ。つま先はかかとから30度ほど外向きに開く。
- 息を吐きながらおしりを下げ、吸いながらゆっくり元の姿勢に戻る。
- 膝は足の人差し指の方向に。かがむときは膝が足先より前に出ない(膝を90度以上曲げない)ようにする。
- 5?6回続けて行う。これを1日3セット。
ベイカーIDI心臓・糖尿病研究所
Diabetes and risk of physical disability in adults: a systematic review and meta-analysis(ランセット 2013年7月24日)