通勤時にしっかり歩けば糖尿病と高血圧のリスクは低下
2013年08月07日
通勤時のウォーキングは立派な"健康運動"だ。車を使わず徒歩で通勤すれば、糖尿病や高血圧のリスクを低減できることが科学的に解明された。
徒歩で通勤している人は糖尿病リスクが40%低下
運動が健康増進のために不可欠であることは、多くの人が認知している。ウォーキングや水泳、ランニング、筋トレ、ダンベル体操、――。それぞれの効能は科学で解明されており、効果的な取組み方を解説した実践書もたくさんある。しかし実際に、一念発起して運動をはじめても、それを習慣として続けていくのは思った以上に難しい。
しかし、誰でも簡単に毎日の習慣にできる運動がある。通勤時の"ウォーキング"だ。通勤時に自宅から駅まで歩く、駅からオフィスまで歩く。この時間を上手に活用すれば、非常に効果的な"健康運動"にすることができる。
最近の研究でも、毎日の通勤で、徒歩や自転車の移動時間が長い人は、それ以外の人に比べて、あきらかに糖尿病や高血圧症を発症しにくいことが示された。
英ロンドン大学などの研究チームは、2万458人の英国人を対象に、通勤時のウォーキングや自転車での移動と、生活習慣病の発症との関連を調査した。
車で通勤している人に比べ、地下鉄やバスを使い徒歩で通勤している人では、あきらかに肥満が少なく、2型糖尿病や高血圧症の発症も少ないことが分かった。
徒歩で通勤している人は、肥満の割合が20%少ないことが示された。糖尿病の発症は40%、高血圧症の発症数は17%少なかった。
自転車で通勤している人では、さらに大きな差が出た。肥満は31%、糖尿病は50%、高血圧症は24%、それぞれ発症数が減っていた。
「通勤の手段として、なるべく車を使わず、徒歩や自転車などを使うことで、肥満や高血圧、2型糖尿病を発症する危険性を減らせることが実証されました。自家用車で通勤している人は車を降りて、なるべく歩く時間を増やした方が良いのです」と、インペリアルカレッジロンドンのアンソニー ラバティ氏(公衆衛生学)は強調する。
1日30分のウォーキングで体は変わる
自宅から駅までバイクで行くのをやめて歩く、次のバス停まで歩いて行きバスに乗る、オフィスの最寄りの地下鉄駅のひとつ手前の駅で下車して歩く――など、ちょっと工夫すれば、ウォーキング時間を増やすのは難しくない。そうすれば、毎日続けられる"健康運動"として、効果は確実にあらわれてくるはずだ。
ちなみに、厚生労働省の健康増進計画である「健康日本21(第2次)」では、日常生活での身体活動・運動を推進する目標のひとつに「日常生活における歩数の増加」を掲げている。
日本人が1日に歩く歩数の平均は、男性7,841歩、女性6,883歩(2010年度国民栄養調査)。自動車移動やデスクワークが多い人だと、この平均よりずっと少なくなり5,000歩前後しか歩いていない人も多い。
「健康日本21」では、2022年までの目標として、男性9,000歩、女性8,500歩を目指している。これは、スポーツ医学などの研究から割り出された数値で、体重60キロの人が、分速70メートルで10分間歩くと、約30キロカロリーのエネルギーを消費量する計算になる。1日30分のウォーキングを毎日続ければ、1週間のエネルギー消費は630キロカロリーになる。
通勤時にしっかり歩くようにすれば、1日30分のウォーキングはさほど難しい目標ではない。
Walking to work cuts risk of diabetes and high blood pressure(インペリアル カレッジ ロンドン 2013年8月6日)