座ったまま過ごす時間を減らせば死亡リスクは低下

2012年10月15日
第48回欧州糖尿病学会(EASD)
 1日の中で座ったまま過ごす時間が長いと、糖尿病や心臓病の死亡リスクは2倍に高まるという研究が発表された。「座ったまま過ごす時間を減らし、立ったまま用事を済ませるようにすると、体によい効果があらわれる」と研究者は指摘している。

 この研究は、英政府が主導し行われている国民健康研究(NIHR)の一環として行ったもの。調査では、18件の研究をメタ解析し、計79万4,577人のデータを解析した。

 調査によると、座ったまま過ごす時間がもっとも長い人では、もっとも短い人に比べ、糖尿病を発症する危険性は2.12倍になった。また、心臓発作や心筋梗塞といった心血管イベントの危険性は2.47倍に上昇し、心臓病が関連する死亡は1.9倍に上昇していた。

 「現代社会では、子供や若者から、働き盛りの世代まで、学校や職場で座ったまま過ごすことを強いられる人が多い」と英ラフバラ大学のスチュアート・ビドル教授(身体運動医学)は話す。

 1日に静座して過ごす時間は平均して50?70%に上る。座ったまま過ごす時間が長いと、運動不足や運動器の能力低下、心肺機能の低下などが引き起こされる。座ったまま過ごす時間を減らすことで、糖尿病や心疾患の危険性を減らすことができるという。「半時間ごとに5分間立ち上がることを続ければ、1日の終わりにはだいぶ変わってくる」とビドル教授は主張する。

 工夫次第で、座ったままの時間を減らすことができる。例えば、「パソコンは机に置かずファイルキャビネットに置いて、立って操作する」、「会議や打合せは立ったまま行う」、「ランチの後はなるべく歩く」、「外出するときには、なるべく座らない」、「夜はテレビを立ったまま見る」というといった工夫を積み重ねれば、立ったまま過ごす時間を増やすことができる。

 「職場などでは立ったまま使える机を増やし、なるべく座らないようにするべきだ。立ったまま済ませられる用事は、なるべく立ったまま行うと体によい効果があらわれる。私は大学で講演するときなども、最初の15分は必ず立って行う」とビドル教授は話す。

 「生活の中で座る頻度を減らすことが、一見して奇異に見られることもあるが、立ったまま過ごす時間を増やすことで得られることが多い。会議などを立ったまま行うと緊張感が持続し、活気付けることができる。私はある会合を試しに立ったまま行ったことがあるが、参加者は最後には立っていることを気に入ったようだ」とビドル教授は付け加えている。

 「乗用車で移動するのが習慣となっている人が、移動を徒歩や自転車で済ますように切り換えるだけで、生活は多く変わっていく。立ったまま過ごす時間を増やすことで、毎日30分の運動を習慣化することもできる」としている。

第48回欧州糖尿病学会(EASD)