中年期のフィットネスが楽しい老年期の決め手に

2012年09月19日
 30?50歳代の中年期に運動をしていた人は、より健康に歳を重ねることができ、高齢になってから糖尿病や心疾患、認知症などの慢性疾患の発症が減ることが、約1万9,000人を対象とした長期追跡研究の結果からあきからになった。報告によると、運動レベルの高い人は、寿命が延びるだけでなく、慢性疾患を発症する時期を遅くし、結果としてそうした疾患に悩む期間を短くできるという。
中年期に運動をすると心疾患、糖尿病、アルツハイマー病の発症が減る
 この研究は、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのジャレット・ベリー氏(内科学)らが、米国医師会が発行する医学誌「Archives of Internal Medicine」オンライン版に8月27日付で発表したもの。

 対象となったのは、長期追跡研究「クーパーセンター縦断研究(CCLS)」に参加した男女約1万9,000人。1970年の登録時年齢は49歳(中央値)だった。

 研究チームは、参加者が65歳になった時点から、米国の高齢者向け公的医療保険であるメディケアの請求情報と、CCLSのデータとの関連を解析した。追跡期間(中央値)は26年。参加者の運動レベルを、トレッドミルでどの程度速く、長く走れるかにより評価し、5分位に分類した。

 心疾患、アルツハイマー病、2型糖尿病、大腸がん、慢性腎疾患、慢性閉塞性呼吸疾患(COPD)などの慢性疾患は、高齢になると急速に発症が増えていく。

 研究ではこうした慢性疾患を発症する割合は、中年期の運動レベルがもっとも高い人では、もっとも低い人に比べ低下することがあきらかになった。運動レベルが高いほど、平均寿命が長く、無病の期間が長いだけでなく、罹患する慢性疾患の数も少ない傾向も認められた。

 また、若いうちからウォーキングやジョギング、ランニングといった有酸素運動を続けていると、歳をとってから慢性疾患の負担を少なくし、質の高い老年期を過ごせることもわかった。

 追跡期間中に死亡した約2,400例を分析したところ、運動レベルの高い人では死亡前5年間に慢性疾患に罹患した割合が低下した。運動レベルがもっとも高い群では、もっとも低い群に比べて、4つ以上の慢性疾患を合併して過ごす期間が50%短く、逆に慢性疾患が1つまたはゼロという状態で過ごす期間は34%長かった。

 「歳をとるのは誰にとっても避けられないことだが、活発な運動やフィットネスを続けていると、加齢に伴い増える慢性疾患の脅威を減らすことができる」とベリー氏は話す。

 では、中年期の健康状態を向上させるにはどうすればいいのか。ベリー氏は「具体的にはトレッドミルで測定されるMETs(運動を行った時に安静状態の何倍のカロリーを消費しているかをあらわす指標)を上昇させることだろう。座って生活することの多い人が適度な運動に取り組んだ場合、METは1ないし2上昇する。成人は週に2.5時間以上、適度な有酸素運動を行うべきだ」と述べている。

Midlife fitness staves off chronic disease at end of life(サウスウェスタン医療センター 2012年8月27日)