ヨガがストレスを低減 12分間のヨガを毎日続けると効果的

2012年08月06日
 認知症などの高齢者を介護している家族やケアマネージャーは、多くのストレスにさらされている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)研究チームは、簡単なヨガを毎日続けることで、介護者のストレスを軽減できるとの研究を発表した。
 「12分間のヨガと瞑想を8週間続けると、体内で免疫系の炎症反応を引き起こす原因となる物質を抑えられる」と研究者は説明している。なぜヨガがストレスを軽減するのか、そのメカニズムはこれまでわかっていなかった。
ヨガが介護者の健康を守る
 研究チームは、認知症介護をしている45家族の遺伝子68個について調べた。エクササイズやポーズ、呼吸、瞑想をとりいれたヨガのキリタン・クリヤという技法に取り組むと、炎症反応が減少したという。この研究は、医学誌「精神神経・内分泌内科学」オンライン版に発表された。

 米国では高齢化は進んでおり、認知症を発症した患者数は500万人に上る。研究者らは「今後の20年間で高齢者の認知症は急増し、介護をする家族やケアマネージャーの負担は大幅に増すだろう」と予測している。

 介護者は慢性の抑うつ症を発症する危険性が高い。家族に要介護者がいる場合、抑うつ症の発症率は50%近くに高まるという調査が発表されている。高齢の介護者ではストレスとうつ病レベルはさらに高くなり、生活と活力、満足度のレベルがより下がると報告されている。

 介護者は慢性的なストレスにおかれており、うつ病進展のリスクが高まっている。さらに、多くの介護者が高齢者でもある傾向がある。このことから、介護者はバイオマーカーの炎症レベルがより高くなる傾向がある。

 研究では、参加者を2つのグループに無作為に分けた。ヨガグループは、キリタン・クリヤを含む12分間のヨガを、8週間毎日実施した。他のグループは同じ期間に毎日12分間、リラクゼーションCDの音楽を聴きながら、目を閉じて静かな場所でくつろぐように指示された。

 研究開始時と8週間後に採血し調べたところ、ヨガグループでは免疫細胞の遺伝子発現に関わる炎症性タンパク質の活性低下を示した。これは、ストレス性の炎症が低下したことを意味している。

 細胞が炎症反応を起こす時は、転写因子として働くタンパク質「NFkB」が活性化され、炎症物質が産生される。NFkBは、ストレスや免疫作用に関する細胞同士の情報伝達に関わるさまざまな生理活性をもつタンパク質であるサイトカインの刺激によって活性化される。

 ヨガに取り組んだグループでは、NFkBの活性化が抑えられていた。「研究では、ヨガのような心理社会的な介在が、介護者の健康に良い影響をもたらすことが示された」とUCLAのHelen Lavretsky教授(精神医学)は話す。

 「介護者の心と体には大きな負担がかかっている。時間や労力の余裕がなく、ストレスを1人で抱えてしまっている介護者は多い。簡単に取り組めるヨガは、有用なストレス解消法になる可能性がある」として、研究チームは介護者ケアプログラムにヨガを取り入れている。

Yoga reduces stress; now it’s known why(カリフォルニア大学ロサンゼルス校 2012年7月24日)