運動不足を解消すれば寿命が延びる オリンピックを前に発表

2012年07月30日
 運動不足が原因で発症する疾患のために、世界で10人中1人が死亡しているという調査結果が、ロンドンオリンピックを前に医学誌「ランセット」に発表された。運動不足は喫煙や肥満に匹敵する危険要因だとして、各国の保健政策の対応を強化するよう求めている。1日15?30分の活発なウォーキングを続けただけでも、健康にもたらす影響は大きい。

世界の10人に1人が運動不足
 研究チームは、不健康な生活習慣が原因で発症する疾患を、まとめて非感染性疾患(NCD)と呼んでいる。主なNCDは、冠動脈性心疾患、2型糖尿病、肺がん、結腸がんなど。ハーバード・メディカルスクールの研究チームは、運動不足が世界各国の人々のNCDにどの程度影響するかを検討した。

 それによると、運動不足が影響するNCDの死亡数は年々増えており、2008年は世界で530万人を超えた。運動不足の割合を世界で10?20%減らすことができれば、年間の死者数は50万?130万人減少し、世界の平均余命は0.68年延びると試算している。

 世界平均でみると運動不足により、成人の3分の1、青少年の約80%で疾患の危険が高まっている。運動不足は成人は15億人の健康に影響しており、心疾患や2型糖尿病、特定のがんにかかる危険は20?30%高まっているという。

 運動不足の程度は国や地域によって大きな差があることも判明した。運動不足が解消された場合に延びる平均寿命は、日本は0.91年と報告されている。もっとも長いのはスワジランドの1.56年で、次いでクック諸島の1.57年、サウジアラビアの1.51年と続く。

 国民の所得の高いほど運動不足になりがちだが、保健政策の進んだ国では影響は低い傾向がある。運動不足が解消された場合に延びる平均寿命は、米国は0.78年、英国は1.07年、ドイツは0.47年、フランスは0.55年、イタリアは0.8年だった。

 運動不足はさまざまな疾患の危険性を高める。日本人の運動不足が影響し死亡率が高まっている疾患について、人口に対する割合は、冠動脈性心疾患は10.0%、2型糖尿病は12.3%、乳がんは16.1%、結腸がんは17.8%となった。世界全体でみると、冠動脈性心疾患は5.8%、2型糖尿病は7.2%、乳がんは10.1%、結腸がんは10.4%だった。

 研究チームは、運動不足は「パンデミック(世界的な大流行)」であるとして、感染症の大流行と同様の対策を講じる必要があると指摘している。

 「この夏のオリンピック大会に参加するスポーツ選手の素晴らしい功績を残すだろう。オリンピックに出場できる選手は限られているが、運動は全世界の圧倒的多数に影響する課題となっている。1日15?30分の活発なウォーキングを続けただけでも、健康にもたらす影響は大きい」と述べている。

Effect of physical inactivity on major non-communicable diseases worldwide: an analysis of burden of disease and life expectancy
Lancet, Published online July 18, 2012