運動器具によるけがや事故に注意 国民生活センターが報告書

2012年06月26日
 国民生活センターは、家庭用健康器具によるけがや事故に関する報告書を発表した。全国の消費生活センターには年間50件前後の相談が寄せられており、最近3年間で件数が増加傾向にある。

 自宅で簡単に運動できる運動器具は、テレビショッピングをはじめ、インターネットやホームセンターなどで販売されており、比較的安価で購入することができる。

 同センターによると、家庭用運動器具には「ステッパー(足踏み型器具)」、「ルームランナー」、「開脚式器具」、「自転車型器具」、「スライダー・ローラー」、「金魚運動器具」、「EMS器具(低周波治療器を応用した腹筋マシン)」などがある。

 家庭内で、わずかな時間やテレビを見ながらでも器具を使って運動することができる運動器具への関心は高いという。総務省家計調査によると、スポーツクラブなどのスポーツ施設への支出が抑えられている一方で、「他の健康用具」への支出は一定の水準を保っている。

危害・危険情報が290件 ルームランナーで転倒や関節痛など
 国民生活センターなどが運営するデータベースによると、家庭用健康器具の危害・危険情報は2007年度から290件が寄せられており、相談事例の中には、「ゴム製のエクササイズ器具で目を強打し、視力が低下した」、「腹筋を鍛える器具を使用中、反動によりバランスを崩して顔面を強打し、けがをした」といった深刻な事例もある。

 表示が不十分であったことによりけがをした事例や、持病がある人が使用した事例、使用上の注意が不足している事例が報告された。健康器具には問題はなかったが、商品テストを実施した結果によって、製品改善が行われたケースもあった。

 同センターが実施した別の調査からは、テレビショッピングなどの通信販売などでは、購入前に使用上の注意や禁忌の確認ができないことや、消費者からみると購入後に自分の健康状態に合っているかわからないケースなどがあった。健康器具にトラブルが生じた際、企業側で十分に対処できていない現状が浮き彫りになった。

 同センターがまとめた報告書には、企業側への改善を求めるとともに、消費者に情報提供することで意識向上もはかっていく狙いがあるようだ。

 被害報告者の年齢の中心は40?60歳代で平均年齢は51.0歳。290件のうち、約7割を女性が占めている。主な症状は、擦過傷・挫傷・打撲に続いて腰痛、皮膚障害だった。

 危害が発生した器具はルームランナーがもっとも多く、転んですりむいた、関節痛になったという事例が多い。次いでおなかや手足等に巻いて使用するベルト型振動機器具が多く、かゆみや腫れなどの症状が出ている。

運動によって症状が悪化するような場合は医師に相談を
 国民生活センターでは、全国の消費生活センターで受け付けた相談の解決のために、商品テストを実施した。家庭用健康器具についての中には、品質や表示上問題があるものもあった。

 例えば、「テレビショッピングで腹筋背伸ばし器具を買った。異音がしてゴムのバンド部分が切れ掛かっていた」との相談を受け、同型品を使用してベルトの耐久テストを行った結果、繰り返し伸縮することによって機能が徐々に低下し、耐久性が十分ではなかったとの調査結果が出たという。

 同センターは、消費者へのアドバイスとして、▽「健康器具は体に負荷をかけるものであることを理解し、購入するか慎重に考える。また、自分の既往歴や健康状態で器具が使用できるか確認する」、▽「取扱説明書等に書かれた使用方法を守る」、▽「その時の自分の体や健康状態に合わせて、自分の体力以上に運動しない。また、運動中に異常を感じたらすぐに中止する」、▽「使用後はストレッチ等で体をほぐす。また、購入時にはあらかじめ保管場所を考える」、▽「使用方法や製品について問い合わせをする場合もあるため、取扱説明書等の書類は必ず保管しておく」といった項目を示している。

 専門家からのコメントとして、日本体育大学健康学科の大野誠教授は「既往歴や持病で薬を飲んでいる人、病院にかかっている人などは、運動によって症状が悪化す るような場合もあるので、家庭用健康器具を使って運動を始める前に医師に運動量や内容の確認をした方がよい」とアドバイスしている。

 「ノルマを決めて運動するのではなく、体調に合わせて無理にならない程度の運動を日常生活に取り入れることが重要。取扱説明書の注意事項の中には、表現が具体的ではないものも見られる。取扱説明書の記載項目や内容についての基準などがあると、消費者にとって判断が容易になるのではないか」と指摘している。

家庭用健康器具による危害等について?気軽に運動できるはずがケガ!使う前には注意表示の確認を?(国民生活センター)