運動を続ければ80歳になっても認知症を予防できる

2012年04月25日
 運動はいくつになっても効果がある。運動を毎日続けると、80歳になってもアルツハイマー病や認知能力の低下を防げるとの研究が発表された。
運動を続けるとアルツハイマー病リスクが1/2?1/3に減少
 毎日の身体活動は、アルツハイマー病の危険性と認知能力の低下を減らし、それは80歳以上の人々にも有効だとする研究が発表された。この研究は、米ラッシュ大学医療センターのAron S. Buchman氏(神経学)らによるもので、医学誌「Neurology」オンライン版に4月18日付けで発表された。

 「ウォーキングなどの運動だけでなく、料理や皿洗い、掃除などの日常での身体活動も、アルツハイマー病の危険性を低下させる可能性がある。一般的に高齢者には激しいスポーツや運動は勧められないにしても、活発に活動し身体活動を増やす対策は大きな利益をもたらすことはあきらかだ」とBuchman氏は話す。

 研究チームは、平均年齢82歳の認知症の認められない高齢者716人を対象に、腕に付けるタイプの活動量計を身につけてもらい、10日間の身体活動を測定してもらった。

 運動や身体活動、安静にしている時間をすべて記録し、さらに参加者の記憶と思考能力を測定するために、認知テストを毎年受けてもらい、身体活動や社会活動について自己申告で回答してもらった。

 この研究は、老年期に共通して起こる慢性症状に関する現在進行中の縦断コミュニティー研究「ラッシュ記憶・加齢プロジェクト」の一環として行われた。

 平均3.5年間の追跡期間中に71人にアルツハイマー病の発症が認められたが、毎日の身体活動の量が下位10%に含まれる群では、上位10%の群に含まれる人に比べ、アルツハイマー病を発症する割合が2.3倍に上昇することが分かった。

 身体活動の強度においても、下位10%の群では上位10%に比べ、アルツハイマー病の発症が2.8倍に上昇していた。

 「手首に付ける活動量計を使用すれば、料理や皿洗い、トランプ、車いすでの移動などの身体活動も測定できる。市販されている活動量計には安価のものがあり、高齢者にとっても使いやすく障害にならない。どんな年齢でも利用でき、アルツハイマー病を予防するために有用だ」とBuchman氏は話す。

 「今回の研究は、身体活動に関する自己申告と客観的な測定にもとづくはじめての研究だ。しかし、高齢者が自分の行動について正確に思い出せない可能性も考慮しなければならないだろう」としている。

 米国では65歳以上の高齢者の数は2030年までに現在の2倍の8000万人に増加すると予測されている。「研究では、身体活動の低下が認知力の低下やアルツハイマー病の発症と関連があることが示された。日常生活を改善することで、身体活動を増やすことができる。高齢者も積極的に運動に参加したほうが良い」とBuchman氏は強調している。

Daily Physical Activity May Reduce Alzheimer’s Disease Risk at Any Age(ラッシュ大学 2012年4月18日)