ビタミンDと運動 骨を強くする生活で糖尿病リスクを低下

2011年08月12日
 日本の全国各地で気温35度以上の猛暑日を記録しているが、季節が反対の南半球ではいまは冬。ビタミンDの血中レベルの高い人では、低い人に比べ、2型糖尿病の危険性が低下することが、オーストラリアで行われた大規模臨床研究で確かめられた。

 ビタミンDは、食品に含まれるものと、体内で合成されるものがある。ビタミンD不足の状態が長期にわたり続くと、骨密度が低下する。

 食事で必要な量のビタミンDを摂取することが、骨折や骨粗鬆症などの予防するためにも重要となる。ビタミンDを体内で合成するためには、日光を適度に浴びることも必要。

ビタミンDと運動 骨を強くする生活
 骨粗鬆症を予防するためには、ウォーキングなどの手軽に取り組める運動に加え、軽いダンベルを持った重力のかかる運動も効果的。骨は物理的な刺激が加わると強さが増す。

 骨は腱を介して筋肉へとつながっているため、ダンベル体操などで筋力トレーニングを行うと、重りを持ち上げるたびに筋肉は強く収縮し、骨に刺激が伝わる。さらに、筋力トレーニングは、ウォーキングだけでは強化できない骨や筋肉を鍛えることもでき、なおも効果的だ。

 ただし、いずれの運動を行う場合も、骨密度を定期的に検査し運動に耐えられるかを知っておくことが、安全のためには重要となる。骨折経験や腰痛などの関節痛がある場合は、整形外科医に相談してから運動したい。

 また、糖尿病のある人が運動をはじめるときは、網膜症や腎臓病、心疾患などの障害がないかなどを、主治医にチェックしてもらうことも大切。

 骨を健康に保つために、カルシウムやマグネシウム、カルシウムの吸収に必要なビタミンDをバランス良くとることが重要となる。ビタミンDを体内で合成するためには、日光を適度に浴びることも必要。また、ウォーキングや筋力トレーニングなど、骨に刺激が加わる運動を習慣として続けることが勧められている。

 「しかし、オーストラリアの3?4人に1人は、毎日の食事でビタミンDを十分に摂取していない。また、オーストラリアは国土が広く、南部の高緯度に位置する州など、日照時間が短く日光を浴びるのが難しい地域もある」とメルボルン病理学研究所のKen Sikaris氏は話す。

 Sikaris氏らは、オーストラリアの2型糖尿病の発症と進展を抑制する方策をさぐる研究を行っている。この研究は米国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。

 オーストラリアやニュージーランドなど南半球の国でも、2型糖尿病は急増している。1999?2005年に行われた大規模コホート研究「オーストラリア人の糖尿病・肥満と生活習慣に関する研究(AusDiab study)」では、オーストラリア広域で糖尿病に関する調査が行われた。それによると、オーストラリアの25歳以上の成人の糖尿病有病率は7.4%に上る。

 研究者らは、約5200人(中間年齢は51歳)の検査結果から、血中のビタミンDの量が25nmol/Lが増えるごとに、糖尿病のリスクが24%減少することを確かめた。体重や家族歴、運動習慣などの影響を取り除いた後も、ビタミンDの不足が糖尿病の危険性と関連があることはあきらかだった。

 血漿中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が増加すると、インスリンを分泌するβ細胞の機能が促され、インスリン抵抗性を改善する効果も期待できるという。

 メルボルン大学のノースウェスト学術センターのPeter Ebeling教授は「ビタミンDのサプリメントを利用した場合でも、糖尿病の発症が減る傾向がみられたが、毎日の食事でビタミンDを十分にとり、日光を浴び運動を習慣的に行った方が、効果はより高かった」と話す。

Serum 25-Hydroxyvitamin D, Calcium Intake, and Risk of Type 2 Diabetes After 5 Years
Diabetes Care May 2011 vol. 34 no. 5 1133-1138

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