1日15分の運動が命を延ばす 台湾で大規模研究
2011年08月29日
軽めの運動であっても、1日15分あるいは週90分続けることが健康増進に役立ち、寿命を延ばすことが、台湾人を対象にした大規模研究であきらかになった。
世界保健機関(WHO)などのガイドラインでは、強度の高い運動を含む運動習慣を勧めているが、東アジア人では中・軽度の運動だけでも、十分に運動の効果を得られるという。この研究は医学誌「ランセット」誌に発表された。
1日15分の軽めの運動でも効果はある
台湾国立医療研究所のChi-Pang Wen氏ら研究チームは、41万6175人の台湾人を対象に、大規模な後ろ向き観察研究を行った。この研究は1996?2008年に平均8年間追跡して行われた。
台湾や中国を含む東アジアでも肥満や2型糖尿病は増えている。肥満や糖尿病、高血圧などの要因が重なると、心疾患や脳血管疾患などの危険性が高まる。別の調査でも、アジア人では欧米人に比べ、少しの肥満でも喫煙習慣、糖尿病が重なると、死亡リスクが高くなることが確かめられた。
運動は、肥満や過体重を解消し、糖尿病や高血圧の予防・改善にも有効だ。「今回の研究では、運動をしている人では全死因による死亡が14%低下することが示された。運動は中程度の軽いものであっても、長寿命に貢献することがあきからになった」とテキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンターのXifeng Wu教授は話す。
研究では、1日あたりの運動時間を15分増やしていくと、死亡の危険性を4%ずつ低下することが示された。30分の運動を毎日行えば、平均寿命は約4年も延びる計算になる。「軽めの運動であっても習慣として続ければ、健康増進の恩恵を得られることが、アジア人を対象とした研究で確かめられた」とWu教授は強調する。
年齢や性別を問わず、また糖尿病などで心疾患のリスクがある人においても、運動が有益であることはあきらかだという。「運動や身体活動が不足している台湾人が、低・中強度の運動を毎日続ければ、死亡の危険性の6分の1を減らすことができる。これは統計的には喫煙習慣のある人が禁煙に成功した場合とほぼ同等とみられる」としている。
運動時間:1日15分からはじめて30分に延ばすと効果的
研究では、参加者に罹病歴や生活習慣について質問し、運動の種類(軽めの歩行、活発な歩行、ジョギングなどやや激しい運動など)と運動時間についてアンケート調査を行った。
運動を習慣として行っていない人も多く、余暇時間に体を動かしたり運動する時間が週に1時間未満の人は全体の54%に上った。運動を行っている人と行っていない人を比較し、運動の強度と死亡率や平均寿命との関連を調べた。
年齢、性別、職業、喫煙やアルコール、体格指数(BMI)、血圧、糖尿病などの罹病歴、空腹時血糖値、収縮期血圧値、総コレステロール値などの影響を考慮し解析した結果、低・中度の運動を行っていた群では、運動をしなかった群に比べ、あきらかに死亡率が低下していた。
世界保健機関(WHO)と米国疾病管理予防局(CDC)は、週に150分以上の中強度の運動をすることを推奨しているが、これはかなり厳しい基準であり、中国、日本、台湾でこの基準に適合する人は全体の20%程度にすぎないという。
「東アジア人では、むしろ中程度の強度の運動を毎日15分間続けることから始めた方がよいかもしれない」と研究者は述べている。「それほど激しくない適度な運動を続けてもらい、運動の時間をなるべく1日30分に延ばすことを促す運動ガイドラインが望ましい」とWu教授は述べている。
Study Finds 15 Minutes of Moderate Daily Exercise Lengthens Life(テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンター 2011年8月16日)Minimum amount of physical activity for reduced mortality and extended life expectancy: a prospective cohort study
The Lancet, Early Online Publication, 16 August 2011
Body mass index and risk of death in Chinese population